とある魔術の禁書目録 二次創作 5
「超能力者?そんな奴が俺に何の用だ?」
訳が分からない。超能力者が上条を誘拐することに何の意味がある?
スピーカーの向こう側にいる男はまたまた楽しそうに話し始めた。
『混乱してるねぇ。仕方ないとは思うけど。まぁ率直に言えば研究のため。でもそれだけじゃない。君は学園都市に対する人質だよ』
??????
ますます分からない。研究利用は置いといて、「人質」?
「俺はレベル0の無能力者だぞ?こんな平凡以下の一高校生を攫って研究してどうする?それに学園都市への人質って何だよ?そもそもここは学園都市じゃないのか?」
さっきから疑問形でしか口を開いていないような気がするがどうしようもない。
『君は自分の価値についてまるで分かっていないな。ちなみにここはドイツ。学園都市なんて遥か彼方だよ』
(は?)
スピーカーの男はさらに続けた。
『俺たちが今いる場所はドイツの超能力研究機関、アーネンエルベ超人進化研究所だ。』
「ドイツだって?お前超能力者なんだろ。能力開発ができるのはまだ学園都市だけなんじゃないのか?」
にわかには信じ難かった。学園都市の他にも超能力を開発しようとしている研究機関が数多く存在することは知っていたが、そういったものが過去、実際に能力者を生み出した、という話は一つも聞いたことが無い。
どこの研究所も能力者を開発しようとして失敗し、学園都市に泣きついては門前払いを喰らうのだ。
『多分学校でも習ってると思うけどね。能力開発において重要な鍵となる、ある思想実験があるよね。「シュレディンガーの猫」ってやつだよ。この実験を考案したエルヴィン・シュレディンガーはドイツのミュンヘン大学で学んでいる』
そういえば。
『さらにその実験の土台となる「不確定性原理」という理論を構築したヴェルナー・ハイゼンベルクはドイツ人。「量子論の父」と呼ばれるマックス・プランクもまたドイツ人だ。ドイツのとある研究所が超能力の開発に成功したのが、そんなに不思議なことかい?』
いや、やっぱり不思議だ。
「仮にそうだとして、なんで今までそれが公に知られてないんだ?学園都市以外の研究機関が能力開発に成功したら世界中で大ニュースになるはずだ」
『ふ、そりゃぁ真っ当な方法で手に入れた研究成果じゃないからさ。自慢したくても自慢できない。ま、他にも色々と事情があるんだけどね』
「つまりどういうことだ?」
『ここで使われている能力開発の資料はほとんど学園都市から盗み出したものだ。独自技術じゃないんだよ。それで能力開発まで漕ぎつけたは良いものの、盗み出せる情報にはやはり限界がある。だから口の堅い学園都市から手っ取り早く情報を手に入れるため、交渉材料を使って脅してみることにした。君が人質ってのはそういうこと』
物騒なことを平然と言ってきた。そんなことのために自分は路地裏に引きずり込まれ眠らされ遠い国に飛ばされ面白さの欠片もない部屋に閉じ込められたと言うのか。
「冗談じゃねぇ!てめぇらそんなくだらないことのために平気で人攫いするのかよ。迷惑もいいとこだ!」
『ははは、そりゃ人攫いは人に迷惑かけるの分かってやるもんだからな』
え、いや、そうだけどさ、でもさ・・・!
『それにさっきも言ったけど、君はホントに自分の価値を分かってないね』
「なに?」
『君の能力は知ってる。幻想殺し(イマジンブレイカー)。どんな能力も君の右手にかかればレベルの如何を問わず打ち消されてしまう。面白い能力じゃないか。ここの研究員達は皆君に並々ならぬ興味を持っている』
研究員が自分に興味を持つ様子などまるで想像できないが。
『超能力の存在が科学的に裏付けられた現代、もはや超能力は疑似科学ではない自然科学の一分野だ。エネルギー保存則、質量保存則、それらの制約をどのようにかいくぐり能力が発現しているのかはまだまだ研究段階だが、存在する以上まぎれもなく、五感と同じ、なんらかの法則に則った上で人間が生来持ち得る能力の一種であるはずだ。自然法則は絶対法則。打ち壊されるはずがない。しかし君の、君の右手にとっては超能力などただの幻想。軽く触れるだけでまるで最初からなかったかのように消されてしまう。しかも君の力は「原石」とも一味違うもののようだ。研究価値が無いはずがないだろう?』
おいおい、そんなに価値があるんだったら俺は何で学園都市の底辺で貧乏な生活を強いられてるんだ?と声を大にして嘆きたいところだが、何故か声が出なかった。
『学園都市としては表向き、君はただの無能力者(レベル0)ということにしたいようだが、実のところは手放したくない。君にはそれだけの価値があるんだからね。そこらの能力者よりもよっぽど人質にうってつけだ』
自分が価値ある人質になり得るとは、これもまた不幸だな、と思ったがそれに関してはもう良い。他にもまだまだ聞きたいことがある。
「ここはドイツって言ったな」
『ああ』
「どうやって連れてきたんだ?」
『君を路地裏に引きずり込んだとき強力な麻酔で眠らせた。ちなみに学園都市からパクッたやつだ。その後第二十三学区まで運んでバッグに詰め込み飛行機に乗った。荷物検査をごまかすのは簡単だったよ。俺にはそういう方面にも便利な能力があるからね。14時間ほど空の旅を楽しんでベルリン・テーゲル空港に着いた後は車のトランクに詰め込んで1時間ほど走った。そして研究所に到着して今に至る。途中何度か麻酔が切れて目を覚まそうとしてたけど、その度にまた麻酔をかけるか頭をぶん殴るかして眠らせたよ。学園都市相手の割にはシンプルでスマートな誘拐劇だろ?』
ふーんってちょっと待て。
「おい、頭ぶん殴っただと!?どおりで目が覚めてからなんだか頭が痛むなーって思ったんだ!これ以上俺の頭を悪くしたら許さねぇぞ!!」
言うべきことがなんだか違うような気がするが彼自身にとってはそれはそれは重要な問題なのだ。
『いや悪いね。癖っていうかね。つい手が出ちゃうんだよ』
「反抗期の中学生かよ!百歩譲って麻酔は良いけど手は出すな手は!」
『ところでさっきニキビ潰しちゃったんだけどこれって痕残っちゃうかな?』
「知らねぇよ!!」
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どうもどうもこんにちは。
しばらく遠出していたのでお休みしておりました。
本日は上条さんが拉致られた理由の暴露なんですけどね。
いやー幼稚っすね。
込み入った理由考える頭は私にはありませんでした。
この程度の設定で我慢して下さい。
能力開発の業界ではそれだけ上条さんは価値のある研究素材だってことでね、納得して下さいよ。
しかし会話のシーンとなると地の文はホント難しいね。
「~だった」とか「~した」の連続みたいなカッコ悪い文章にはよくお目にかかりますし心底バカにしてましたがいざやってみると実に難しい。
おかげでほとんどセリフになってしまいましたよ。
つけ上がってごめんなさい。
これでも努力した方です。これも認めてやって下さい。
さて、今回は物語の舞台も明らかになりましたね。
ついでに今回登場したある単語もね、マニアックな方ならすぐ敵組織の正体が頭に浮かんだことと思います。
では次回もお楽しみに。
訳が分からない。超能力者が上条を誘拐することに何の意味がある?
スピーカーの向こう側にいる男はまたまた楽しそうに話し始めた。
『混乱してるねぇ。仕方ないとは思うけど。まぁ率直に言えば研究のため。でもそれだけじゃない。君は学園都市に対する人質だよ』
??????
ますます分からない。研究利用は置いといて、「人質」?
「俺はレベル0の無能力者だぞ?こんな平凡以下の一高校生を攫って研究してどうする?それに学園都市への人質って何だよ?そもそもここは学園都市じゃないのか?」
さっきから疑問形でしか口を開いていないような気がするがどうしようもない。
『君は自分の価値についてまるで分かっていないな。ちなみにここはドイツ。学園都市なんて遥か彼方だよ』
(は?)
スピーカーの男はさらに続けた。
『俺たちが今いる場所はドイツの超能力研究機関、アーネンエルベ超人進化研究所だ。』
「ドイツだって?お前超能力者なんだろ。能力開発ができるのはまだ学園都市だけなんじゃないのか?」
にわかには信じ難かった。学園都市の他にも超能力を開発しようとしている研究機関が数多く存在することは知っていたが、そういったものが過去、実際に能力者を生み出した、という話は一つも聞いたことが無い。
どこの研究所も能力者を開発しようとして失敗し、学園都市に泣きついては門前払いを喰らうのだ。
『多分学校でも習ってると思うけどね。能力開発において重要な鍵となる、ある思想実験があるよね。「シュレディンガーの猫」ってやつだよ。この実験を考案したエルヴィン・シュレディンガーはドイツのミュンヘン大学で学んでいる』
そういえば。
『さらにその実験の土台となる「不確定性原理」という理論を構築したヴェルナー・ハイゼンベルクはドイツ人。「量子論の父」と呼ばれるマックス・プランクもまたドイツ人だ。ドイツのとある研究所が超能力の開発に成功したのが、そんなに不思議なことかい?』
いや、やっぱり不思議だ。
「仮にそうだとして、なんで今までそれが公に知られてないんだ?学園都市以外の研究機関が能力開発に成功したら世界中で大ニュースになるはずだ」
『ふ、そりゃぁ真っ当な方法で手に入れた研究成果じゃないからさ。自慢したくても自慢できない。ま、他にも色々と事情があるんだけどね』
「つまりどういうことだ?」
『ここで使われている能力開発の資料はほとんど学園都市から盗み出したものだ。独自技術じゃないんだよ。それで能力開発まで漕ぎつけたは良いものの、盗み出せる情報にはやはり限界がある。だから口の堅い学園都市から手っ取り早く情報を手に入れるため、交渉材料を使って脅してみることにした。君が人質ってのはそういうこと』
物騒なことを平然と言ってきた。そんなことのために自分は路地裏に引きずり込まれ眠らされ遠い国に飛ばされ面白さの欠片もない部屋に閉じ込められたと言うのか。
「冗談じゃねぇ!てめぇらそんなくだらないことのために平気で人攫いするのかよ。迷惑もいいとこだ!」
『ははは、そりゃ人攫いは人に迷惑かけるの分かってやるもんだからな』
え、いや、そうだけどさ、でもさ・・・!
『それにさっきも言ったけど、君はホントに自分の価値を分かってないね』
「なに?」
『君の能力は知ってる。幻想殺し(イマジンブレイカー)。どんな能力も君の右手にかかればレベルの如何を問わず打ち消されてしまう。面白い能力じゃないか。ここの研究員達は皆君に並々ならぬ興味を持っている』
研究員が自分に興味を持つ様子などまるで想像できないが。
『超能力の存在が科学的に裏付けられた現代、もはや超能力は疑似科学ではない自然科学の一分野だ。エネルギー保存則、質量保存則、それらの制約をどのようにかいくぐり能力が発現しているのかはまだまだ研究段階だが、存在する以上まぎれもなく、五感と同じ、なんらかの法則に則った上で人間が生来持ち得る能力の一種であるはずだ。自然法則は絶対法則。打ち壊されるはずがない。しかし君の、君の右手にとっては超能力などただの幻想。軽く触れるだけでまるで最初からなかったかのように消されてしまう。しかも君の力は「原石」とも一味違うもののようだ。研究価値が無いはずがないだろう?』
おいおい、そんなに価値があるんだったら俺は何で学園都市の底辺で貧乏な生活を強いられてるんだ?と声を大にして嘆きたいところだが、何故か声が出なかった。
『学園都市としては表向き、君はただの無能力者(レベル0)ということにしたいようだが、実のところは手放したくない。君にはそれだけの価値があるんだからね。そこらの能力者よりもよっぽど人質にうってつけだ』
自分が価値ある人質になり得るとは、これもまた不幸だな、と思ったがそれに関してはもう良い。他にもまだまだ聞きたいことがある。
「ここはドイツって言ったな」
『ああ』
「どうやって連れてきたんだ?」
『君を路地裏に引きずり込んだとき強力な麻酔で眠らせた。ちなみに学園都市からパクッたやつだ。その後第二十三学区まで運んでバッグに詰め込み飛行機に乗った。荷物検査をごまかすのは簡単だったよ。俺にはそういう方面にも便利な能力があるからね。14時間ほど空の旅を楽しんでベルリン・テーゲル空港に着いた後は車のトランクに詰め込んで1時間ほど走った。そして研究所に到着して今に至る。途中何度か麻酔が切れて目を覚まそうとしてたけど、その度にまた麻酔をかけるか頭をぶん殴るかして眠らせたよ。学園都市相手の割にはシンプルでスマートな誘拐劇だろ?』
ふーんってちょっと待て。
「おい、頭ぶん殴っただと!?どおりで目が覚めてからなんだか頭が痛むなーって思ったんだ!これ以上俺の頭を悪くしたら許さねぇぞ!!」
言うべきことがなんだか違うような気がするが彼自身にとってはそれはそれは重要な問題なのだ。
『いや悪いね。癖っていうかね。つい手が出ちゃうんだよ』
「反抗期の中学生かよ!百歩譲って麻酔は良いけど手は出すな手は!」
『ところでさっきニキビ潰しちゃったんだけどこれって痕残っちゃうかな?』
「知らねぇよ!!」
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どうもどうもこんにちは。
しばらく遠出していたのでお休みしておりました。
本日は上条さんが拉致られた理由の暴露なんですけどね。
いやー幼稚っすね。
込み入った理由考える頭は私にはありませんでした。
この程度の設定で我慢して下さい。
能力開発の業界ではそれだけ上条さんは価値のある研究素材だってことでね、納得して下さいよ。
しかし会話のシーンとなると地の文はホント難しいね。
「~だった」とか「~した」の連続みたいなカッコ悪い文章にはよくお目にかかりますし心底バカにしてましたがいざやってみると実に難しい。
おかげでほとんどセリフになってしまいましたよ。
つけ上がってごめんなさい。
これでも努力した方です。これも認めてやって下さい。
さて、今回は物語の舞台も明らかになりましたね。
ついでに今回登場したある単語もね、マニアックな方ならすぐ敵組織の正体が頭に浮かんだことと思います。
では次回もお楽しみに。
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